Narrative ナラティブ

助産師ナラティブ~片山 由美~
カテゴリー 分娩取扱
名前 片山 由美
所属 ゆずりは助産院

現在のお仕事について教えてください。

お産のできる助産院を13年前に開業して運営しています。
妊婦健診、お産、入院、産後のサポート、妊活相談、病院でお産される妊婦さんの健康相談、育児相談や、子供たちへのいのちの授業が助産院での主な仕事内容です。
また、助産院の開業サポートを8年前から始め、現在に至るまで約11件の助産院開業のアドバイザーをさせていただき、現在開業前2件の相談に乗らせていただいており、お産のできる助産院を増やす活動をしています。
また、6年前から病院で勤務されている助産師さんを対象に、学び舎を開設し、病院でもまずは医療に頼らずお産というスタートを迎えられるように妊娠中にしっかりとお母さんを健康に導くことのできる助産師として助産力向上を目指すためのセミナーを開催しています。

助産院を利用した方へ身体に良い食事を提供していたところ、産後、レシピを教えてほしい、もう一度食べたいという声をいただいたので、心と身体に優しいごはんとおやつを提供できる場として、併設したカフェを作りました。
助産院やカフェで食べて頂いた後に、自宅でも再現できるような、身近な食材を使って料理し、提供するようにしています。 口コミやインスタグラムで広がり、多くの方がきてくださる場となっています。現在は不定期営業とし、予約でテイクアウトのお弁当やおやつを提供しています。
また、今年9月よりカフェスペースを使ってライフスタイルショップをオープンし、助産院や私自身が愛用しており本当によかった洗剤や身体を温めるもの、インナーやお洋服などを取り扱っております。
2020年から、「onlinesalon〜暮らしごと時々助産〜」というオンラインサロンを運営し、日々の暮らしごとや助産のことを発信させていただくコミュニティを作って、現在約90名のメンバーさんと、暮らしの中のお料理レシピやふと感じたこと、日々の助産のこと、趣味や大好きなこと、興味をもったことの紹介などを配信し、メンバーの皆さまとやりとりさせていただいております。

現在のお仕事を始めるまでの経緯について教えてください。

助産師を目指したきっかけは?

高校三年生の時に大好きな祖母が亡くなりました。2年間ほど施設に入所していましたが、最期に家族が間に合わず、祖母を一人で旅立たせてしまったということが、高校生ながらにショックでした。
これからは大切な人を自分で看取りたい、という思いで当初は看護師になると決めました。看護学校に入学すると、産科の実習で赤ちゃんたちがとにかく可愛らしく、そしてお母さんたちが皆素晴らしかったこと、そこで勤務されている助産師さんが明るく楽しそうに働かれているのを目の当たりにし、私も助産師になりたいと思いました。かわいい赤ちゃんにずっと関わり続けるには、やはり助産師になるしかないと決意しました。

現在の仕事を始めるきっかけは?

総合病院で4年間勤務した後、結婚を機に退職し、第1子を出産しました。
病院勤務時代は、自身の思いの丈を十分にお母さんや赤ちゃんに注ぎきれない葛藤を抱え、本当はもっと傍に寄り添いたいのに、という想いを抱えながら働いていました。
そこで、退職後は視野を広げるきっかけになればと、カフェのアルバイトをしながら過ごしていました。
どんな仕事もやりがいはありますが、やはり助産師の仕事は素晴らしいなと改めて感じることが増え、復帰先は友人の強い勧めで助産院に決めました。そこで出逢った開業助産師の先生と、助産院でのお産で人生が変わりました。助産院での勤務は、単に医学の知識があればいいというものではなく、暮らしの中で助産師自身がごはん作りや掃除、洗濯などを実践し、自身の健康づくりをしていくことで得た経験が仕事にそのまま活かされるようなものでした。
ここには、医学の最高峰「予防」というものをしていくための智慧がたくさん溢れていました。
ここでお産されるお母さんたちは、皆健診を楽しみに通い、そしてご家族と支え合いながらお産をし、元気に帰っていかれる。病院時代あまり目にすることのなかったお母さんたちの最高の笑顔に携わらせていただき、こんな場所を自分でも作りたい!そして日本中に助産院を増やしたい!と思い、28歳で開業を決意し、助産院勤務を続けながら開業のための土地探しや準備をし、33歳で今の助産院を開業しました。
この間に次男の出産もあり、助産院で足がけ5年しっかり学べたこともとても良かったと思っています。

現在のお仕事でのやりがいについて教えてください。

こころに残っているエピソード等について教えてください。

不安気に通われていた妊婦さんもお産前になると口を揃えて「お産が楽しみ」とおっしゃられていて、お産後の感想ノートにも「お産が楽しかった、気持ちがよかった、からだづくりを通して私だけでなく家族が健康になった」などと書かれているのを目にすると、妊娠期にゆっくりじっくり伴奏させていただけた喜びを感じます。
開業すると全ての責任を自分自身で負えることにより、自由に思いの丈全てをお母さん、赤ちゃんにそそげるというところがとても幸せだなと思います。お二人の命をお預かりして、順調ばかりではなく時には大変なこともありますが、最終的には喜びややりがいに変わっていく、この感覚は何物にも変え難いです。妊娠期、毎回時間をかけて妊婦さんとゆっくり向き合い、その人の人となりまで把握し、信頼関係を築いてからお産の日を迎えます。その方の体型や性格、生活環境、その方を取り巻く背景を把握してからお産に関わるので、とても安心感があります。
病院勤務の頃は、初めてお会いする妊婦さんのお産に関わることも多々あり、お産が怖いと感じることもありました。
妊婦さんも、自分のことをわかってくれているというのは、いよいよという時に10か月をかけて互いに築いてきた信頼関係があることで、お産に集中できるという安心感があるのではないでしょうか。
自宅と助産院、カフェが同一施設内にあることで、私自身の子育てなども経験しながら日々の暮らしの中でお母さんたちと同じ目線で携わらせていただけます。暮らしの工夫が助産のヒントになり、助産で教わったことが人生の学びとなり、全てが繋がった生き方をさせていただいております。

苦労したことなどがあったらお聞かせください。

とにかく大好きなことを仕事にさせていただけるのですから、苦労を苦労と感じたことはあまりないです。
助産院やカフェの開業は、人生の良い経験となり新たに開業をする方の支援に役立っています。もちろん時には失敗もありますが、無駄なことは一つもなかったなと感じております。

今後の目標や展望など教えてください。

お母さんが我が子を愛おしく思えるお産、いい育児に繋がるお産を経験してもらいたい、人生のスタートであるお産が変わることで、赤ちゃんとそのご家族の未来が良いものになって欲しいと思うのです。そしてその未来が、世の中が良くなるということに繋がっていくのだと信じています。
助産院で助産師の勉強会を通して、暮らしの工夫が助産へ繋がるということを知ってもらうことができても、病院ではとても忙しく多くの妊婦さんがおられるため、お母さんたちと密に関わることが難しく、学んでいただいたことが日々のケアに還元できない現実があります。また、病院で妊婦さんへ関わろうとしても、妊婦さん自身が実践してくれないという助産師の声があるのも事実ですから、妊婦さんの行動変容はどうしたらいいかということも課題の一つです。
そこで昨年の春から、個人の産院で月に数回妊婦さんたちと関わらせていただき、どういう伝え方をすれば病院の妊婦さんでも行動変容し、健康や安産に向けて実践してくれるかどうか、という取り組みをさせていただいております。できるだけ同じ助産師が継続して関わることでどのような効果が現れるか、妊娠期から育児まで、継続して関わることで赤ちゃんとご家族の健やかな幸せに繋がることを信じて取り組んでいます。この取り組みと並行して、暮らしの中でお産を支える助産師の仲間を増やしていくお産のできる助産院を増やす活動も継続していきます。
どこでお産をされても納得のいく幸せなお産ができる社会づくりをこの人生をかけて挑んでいく所存です。

現在さらなる飛躍を目指している助産師に向けてアドバイス等ぜひお願いします。

「今、やりたいことができていますか。」
どんなこともあなた次第です。
人生は一度きり。
夢は叶えるために存在しているので、できるかできないかより、やるのかやらないのかをご自身に問いかけて本当に心の望むことをぜひ生きてください。
物事の「そもそも」という本質に一度は思いをめぐらし、ご自身の身体を大切にし、医学だけに囚われずたくさんの人や物事に触れて、多角的な視野をもって今歩む道を大切にしてください。
皆さまの大切な助産師人生を心より応援しております。

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