Narrative ナラティブ

助産師ナラティブ~奥山 敬子~
カテゴリー 分娩取扱
名前 奥山 敬子
所属 社会医療法人愛仁会 千船病院

現在のお仕事について教えてください。

社会医療法人愛仁会 千船病院で勤務しています。助産学校を卒業してすぐ千船病院に就職し、最初は産科病棟でお産の介助や新生児のケアに総合的に携わりました。その後に院内助産院へ異動し、より幅広くお母さんと赤ちゃんをサポートする仕事をしています。
院内助産院の対象となる妊婦さんは、妊娠24週以降で経過が正常な方です。妊婦さんとご家族が院内助産での自然分娩やフリースタイルのお産を希望する場合に、医師の外来から移行して妊娠・分娩・産後サポートを行うのが仕事です。千船病院の産科では月200件ほどのお産がありますが、そのうち20~30件ほどが院内助産院での出産となっています。
院内助産院では、お母さんと赤ちゃんの経過に問題がない限り、妊婦健診や分娩には医師の診察・立会いがありません。ですので、助産師として妊娠中からお産まで様々な経験を積むことができる現場です。何か緊急事態を要する状態となれば、院内にいる医師に連絡をしてすぐに必要な処置ができる点は、院内助産院の強みだと思います。

現在のお仕事を始めるまでの経緯について教えてください。

助産師を目指したきっかけは?
子どもの頃から、テレビで医療をテーマにした番組や子育て奮闘記などの番組を観るのが好きでした。そういったことに興味があったので、将来は看護師になりたいと思って高校卒業後は看護学校に進学しました。

看護学校の実習では色々な領域を学びましたが、産科実習で分娩に立ち会わせていただいたときに「助産師は産婦さんと一緒に出産を喜べる、すごく素敵な仕事だ」と感じたのがきっかけで、助産師になりたいと強く思いました。

  1. 現在のお仕事である院内助産に携わったきっかけは?

産科に配属されて最初の5年間は、外来での妊婦健診、病棟での分娩介助やハイリスク妊婦のケア、新生児のケアなど幅広く基礎を習得しました。経験を重ねるうちに、より細かい妊産婦のケアと信頼関係のあるお産を支援したいと考え、院内助産へ異動しました。

院内助産では、チームで妊婦健診から出産まで継続して担当するので、信頼関係を築きやすいことが仕事をしていく上でのやりがいへと繋がっています。私は、院内助産院だからこそできる「自分らしいお産」を妊婦さんと一緒に考え、「自分で産む」という主体的で前向きな気持ちを持ってお産に臨める関わりを心がけています。

現在のお仕事でのやりがいについて教えてください。

助産師のお仕事の魅力とは?

私は今まで400人ほどの赤ちゃんを取り上げてきましたが、妊婦さんに施したケアや保健指導が良い結果につながったときはとても嬉しいです。これをしてみたら安産になったというように、助産ケアの力でお産を進めていけるのは院内助産ならではの魅力だと思います。
例えば、陣痛が弱い時におっぱいマッサージなどのケアを行うと、陣痛が強くなります。長時間のお産による疲れから「早く産みたい、陣痛がつらい」というお母さんにおっぱいマッサージをして「頑張って早く産もうね」と声掛けとケアを続けていると、どんどん陣痛が強くなり、2~3時間で赤ちゃんを迎えることができたこともありました。そういうときは女性の体の素晴らしさと女性の強さを実感しますし、自分のケアが良いお産を促したと思うと、やってよかったなと思います。

こころに残っているエピソードは?

院内助産院で出産する方は、1人目は病院で産んだけれども、2人目は院内助産院にしてみようという方も多数いらっしゃいます。そういったお母さんたちは「1人目から院内助産を使えば良かった」とか「助産師さんがじっくり話を聴いてくれるのが嬉しい」と言ってくださいます。院内助産の外来では一人あたり30分ほど時間を取ってお話しているので、困ったことをすぐに相談できる手厚い体制があるのが特徴です。
また院内助産院に来られる妊婦さん自身が「このバースプランを叶えたい」と妊娠中から様々な想いを持ってきてくれます。私たちはできるだけそのプランが叶うよう、妊娠中から保健指導を行い安心してお産に臨めるように支援しています。お産は必ずしも思った通りに進むわけではありませんが、院内助産院のメンバーと妊婦さんとで力を合わせて出産を終え、「ここで産んで良かった」と言ってもらえたときは達成感があります。


苦労したこと、難しいと感じた経験があればお聞かせください。

院内助産院には受け入れできる妊婦さんの一定の基準があります。例えば、以前に帝王切開をしたことがある方や、妊娠高血圧症候群と診断された方などは出産に危険を伴うため、院内助産院で出産をすることができません。そんな中でも「院内助産院で出産したい」と希望してくださる方も多くいるため、せっかく興味を持ってくれたのにお受けできない旨を伝えるのはとても心苦しく思っています。
また、コロナ禍によって出産を取り巻く環境は大きく変わりました。これまでは妊婦健診で旦那さんも一緒に赤ちゃんの様子を見てもらっていたのが、現在(2023年3月)出産の立ち合い・面会ともにできない状況が続いています。
院内助産院で出産をするメリットは、上のお子さんを含めた家族全員で赤ちゃんを迎えられることです。コロナ禍による様々な規制はありますが少しでも一緒に赤ちゃんを迎えることができる体制ができればと、出産の際にご家族の方とテレビ電話を繋いで一緒にお産をする場所を作ったり、分娩の動画を撮って家に帰ってからお母さんと赤ちゃんの頑張りを一緒に観てねと伝えたり、旦那さんにも出産に一緒に臨んでもらえる働きかけについて工夫しています。

今後の目標や展望など教えてください。

産後は、2週間健診と1ヶ月健診でしかお母さんと赤ちゃんに会える機会がないのですが、その合間にもう少し関わりを増やして、色々なことを相談しやすい環境を作りたいと思っています。そしてその後も育児サークルのような形で継続的に集まれる環境ができたらすごくいいなと思います。

院内助産院はまだまだ認知度が低く、健診で来院された妊婦さんにおすすめしても「初めてのお産だし、よくわからないからやめておきます」という方が多いです。私たち助産師としては、初めてだからこそ色々とお伝えしたい!ぜひ来て欲しい!と思うのですが、その部分のハードルはまだまだ高いと感じます。

そういう意味ではクチコミの力は絶大で、実際に利用してくれる方は「友達が良いと言っていたので来ました」という場合も多々あります。そこで外来の待合室には利用者のメッセージカードと写真を掲示して、「院内助産のこんなところが良い」と伝えています。そのメッセージを見て興味を持ってくれるお母さんも増えてきました。

千船病院は2007年から院内助産院を開設し、15年間でのべ4,000人以上に利用いただきました。これからもお母さんたちの「ここで産んで良かった」という声を集め、皆さんに選んでいただける院内助産院になれるよう、チームのみんなと一緒に頑張っていきます。

これから助産師を目指す方や、さらなる飛躍をしたいと考える現役助産師の皆さんに向けたアドバイスをお願いします。

助産師になるまでの過程はなかなか大変で、私も学生時代には実習や勉強がしんどいと感じる瞬間がありました。けれども、晴れて助産師になったら楽しいことがいっぱいあります。助産師はお母さんにも赤ちゃんにも日々癒されますし、とてもやりがいのある仕事だと感じています。

院内助産院は、助産師の専門性が特に発揮される場所です。助産師を目指す方にはぜひ院内助産の存在も知って欲しいと思っています。助産ケアを通してお母さんの満足度が高い出産をお手伝いしたり、助産師ならではのケアや指導を通じて、良いお産へ向かうように日々一緒に学び、一緒に頑張る仲間が増えてくれると嬉しいです。

愛仁会千船病院について

奥山様が勤務している愛仁会千船病院のホームページはこちらからご覧ください。

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