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助産師のコアコンピテンシー

助産師のコア・コンピテンシーとは何か

「助産師のコア・コンピテンシー」とは、日本の助産師に求められる必須の実践能力である。

助産師のコア・コンピテンシーは、〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉という4つの要素から構成される。助産師の実践能力としてこれらの構成要素が必要な理由は、『助産師の声明』に示された「助産師の理念」、すなわち〈生命の尊重〉・〈自然性の尊重〉・〈智の尊重〉に根拠がある。

助産師のコア・コンピテンシーの4要素、すなわち〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉の具体的な内容は、『助産師の声明』の「助産師の倫理綱領」および「助産師の役割・責務」に示された実践内容を反映するものである。

  • コンピテンシー1

    倫理的感応力

    「助産師の倫理綱領」に示された、助産師活動における道徳的義務を実践に反映する能力。

  • コンピテンシー2

    マタニティケア能力

    「助産師の役割・責務 4-1」に示された、妊娠期、分娩期、産褥期、乳幼児期におけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力。

  • コンピテンシー3

    ウィメンズヘルスケア能力

    「助産師の役割・責務 4-2」に示された、ウィメンズヘルスにおけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力。

  • コンピテンシー4

    専門的自律能力

    「5.助産管理における役割・責務」および「6.専門職としての自律を保つための役割・責務」に示された内容を実践に反映する能力。

助産師のコア・コンピテンシーのイメージ図

助産師のコア・コンピテンシーのイメージ図
助産師のコア・コンピテンシーのイメージ図

解説

助産師のコア・コンピテンシーは、〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉という4つの要素で構成される。
〈倫理的感応力〉は、〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉を働かせるときに必須の基礎的能力である。〈倫理的感応力〉の豊かさは〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉に反映する。同時に、〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉の高まりに応じて〈倫理的感応力〉はその拡がりや深まりを増す。このように〈倫理的感応力〉と〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉とは相互的で循環的な関係にある。
助産師の理念(生命の尊重、自然性の尊重、智の尊重)は、助産師の4つのコア・コンピテンシーの中心に位置し、各能力を適切に方向づける役割を果たしている。

コンピテンシー1 :〈倫理的感応力(※1)〉

「助産師は、対象一人ひとりを尊重し、そのニーズに対して倫理的に応答する。」

解説

助産師は、対象となる一人ひとりの女性と子どもおよび家族を尊重し、敬愛と信頼に基づく相互関係を基盤として活動することによって、生命の尊重・自然性の尊重・智の尊重という助産師の基本理念を、行動として具体化する専門職である。そのために助産師には、対象となる女性と子どもおよび家族の生命や人間としての尊厳と権利を最大限に尊重するために相手のニーズを的確にくみ取り反応する能力、女性と子どもおよび家族との間に信頼関係を築きつつ平等で最善のケアを提供する能力、女性と子どもおよび家族に関する情報の保護を徹底しケア対象者のプライバシーを守る能力が求められる。

実践の基準

助産師は、

  • 女性と子どもおよび家族の生命、人間としての尊厳と権利を尊重する。
  • 女性と子どもおよび家族に対して、国籍、人種、宗教、社会的地位、ライフスタイル、性的指向などによる何らの差別を設けずに、平等にケアを提供する。
  • 女性と子どもおよび家族にとって最善のケアを提供する。
  • 女性と子どもおよび家族との間に信頼関係を築きつつケアを提供する。
  • 女性と子どもおよび家族をエンパワーメントする立場として、女性と子どもおよび家族に有益で専門的な情報を提供し、十分な情報に基づいて対象が選択する権利を支援する。
  • 女性と子どもおよび家族の知る権利と自己決定する権利を尊重するとともに、女性と子どもおよび家族が自ら選択した結果に対する責任を引き受けることを支援する。
  • 個人のプライバシーを守るために、女性と子どもおよび家族に関する情報の保護を遵守する。
  • 自己の決定と行動に対して責任をもち、さらに、女性と子どもおよび家族へのケアに関する説明責任を有する。
  • 助産師同士の組織を作り、互いに情報交換して、助産ケアの質を向上させる。
  • 助産師自身の健康保持・健康増進に努める。

(※1)倫理的感応力

対象となる人々の行為や言動の意味を心に感じ、倫理的に応答する能力。「倫理的に応答する」とは、対象とかかわる中で援助を必要とするニーズを見極め、対象と情報を共有しながら対象にとってより善い選択ができるように支援していくこと。

コンピテンシー2 :〈マタニティケア能力〉

「助産師は、分娩を核とするマタニティサイクルにおいて、安全で有効な助産ケアを提供する。」

解説

助産師は、妊娠期、分娩期、産褥期、乳幼児期における、母子および家族のケアの専門家である。よって、もてる知識や技能を統合し、全期を通じて母子および家族に必要なケアを提供する。自己の責任のもとに正常な分娩を介助し、新生児および乳幼児のケアを行う。支援にあたっては、女性の意思や要望を反映できるように、支援計画・実施・評価を行い、ケアの向上に努める。母子にとって安全で、満足な分娩が行えるように支援する。
 高度医療の発達に伴い発生するハイリスク児の誕生から乳幼児期にいたるまで、継続的に児の発達水準に対応した育児ができるように、他の専門職種との協働において母親および家族を支援する。また、出生前診断などの先端医療に関して、医師や他の専門職種との連携をとおして支援する。

実践の基準

助産師は、

  • 妊娠の診断、妊娠期間を通して母子の心身の健康状態の評価を行い、正常に保つための助産ケアを行う。
  • 安定した妊娠生活の維持に関する診断とケア、および女性の意思決定や意向を考慮した日常生活上のケアを行う。
  • 妊婦や夫・家族への出産準備、親準備教育の企画・実施・評価を行う。
  • 妊娠経過に伴う正常からの逸脱徴候が発見されたら、医師や他の職種と協働して正常の妊娠経過をたどることができるように
    支援する。
  • 流早産、胎児異常、子宮内胎児死亡、分娩進行中および出生直後の新生児の死亡などにより心理的危機に陥った妊産婦とその家族へのケアを行う。
  • 分娩の開始ならびに分娩進行、母子の健康状態の診断を行う。
  • 母子とその家族の分娩進行に伴うケアを行い、自然な経膣分娩の介助を行う。
  • 異常発生時の判断と臨時応急の手当てを行う。また、他の医療施設への搬送の必要性を判断し適切に行動する。
  • 産婦と分娩の振り返りを行い、産婦の出産体験がより前向きに捉えられるように支援する。
  • 産褥経過の身体的観察と診断、および心理的・社会的側面の診断を行う。
  • 産褥期の進行性変化や退行性変化を促し、褥婦のセルフケア能力を高め、育児の基本が習得できるように支援する。
  • 家族が地域社会の資源や制度を理解し、活用できるように支援する。
  • 新生児・乳児が母体外生活にスムーズに移行するための生理的適応に伴うニーズをアセスメントし、新生児の心身の健康を最大にするよう支援する。
  • 女性とその家族が、乳幼児の成長発達に応じた適切な育児ができるよう支援する。
  • 地域の母子の健康レベルに応じて、健康診査や相談、訪問を通して母子とその家族の健康維持を支援する。
  • ハイリスク児の誕生から、乳幼児期(少なくとも出生後1年頃)まで、児の発達水準に対応した育児ができるように、医師や他の専門職種との協働において母親・家族を支援する。
  • 出生前診断などの先端医療に関する最新の情報提供、検査時のケアおよび出生前診断の経過中の精神的支援を、医師や他の専門職種との協働において行う。

コンピテンシー3 :〈ウィメンズヘルスケア能力〉

「助産師は、女性の生涯を通じた支援者であるとともに、相互にパートナーシップを築く。」

解説

助産師は、女性の健康の保持・増進を促し、女性が自己の健康管理を行えるよう日常生活上のケアを通して支援する。具体的には、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から、女性のライフステージや遺伝などの家族全体に関わる課題において、健康教育、知識の普及・啓発、健康相談、保健指導を行い、健康をめぐるさまざまな問題に女性が対処できるよう支援する。

実践の基準

助産師は、

  • 思春期にある女性の二次性徴の成熟に伴う身体、精神・心理機能の調整に関し、この時期特有の変化を理解して、適切な助言と指導を行い、正常な成長・発達に向けて支援する。
  • 女性と家族自らが、自己のリプロダクティブ・ヘルス/ライツの理念に基づいて、家族計画を立案し、受胎調節を実行できるように支援する。
  • 妊娠を希望していても妊娠しない悩みをもつ女性とその家族に対して、情報収集し、対象の状況とニーズに応じて支援する。
  • 異常児を妊娠・出産した既往歴がある女性や、児の健康に不安を抱く未妊婦とその家族に対して、最新の情報提供や遺伝相談を中心にしたカウンセリングによる支援を行う。
  • 中高年にある女性に特有な身体、精神・心理機能の変化を理解して、その適応を促すために適切な助言と指導を行い、日常生活の質を高めるように支援する。
  • 女性の抱えるトラブル(性感染症、月経障害等)に関する健康状態を理解し、最新の情報を提供しながら、保健医療チームとともに治療や援助を行い、女性が健康管理を行えるように支援する。
  • 女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツを尊重して、女性に対する暴力を発見し、アセスメントを行い、他の専門職者との連携のもとに、適切に支援する。

コンピテンシー4 :〈専門的自律能力〉

「助産師は、専門職としてのパワーを組織化し、社会に発信する。」

解説

助産師は、自律した専門職者として施設を自ら経営または経営管理に参画して、緊急時の適切な対応や医療事故防止に努め、保健・医療・福祉に貢献する。 助産師には、自律性のある専門活動を維持し向上させるために、専門職能団体を組織して社会的な活動を行い、情報を発信するとともに、助産領域の研究に参画し、助産師間やケア対象者、医師、他の専門職との相互交流を通じて、助産ケアの改革や質の向上を目指す能力が必要である。後輩助産師を育成する能力や、継続的に自己研鑽する能力も、自律性のある専門活動を維持・発展させるために重要である。

実践の基準

助産師は、

  • 助産ケアの水準を向上させ、専門職の責務を十分に果たすために、業務内容を客観的に評価し、その評価結果を助産業務に
    反映させる。
  • 専門職者として、科学的根拠に基づく助産実践(EvidenceBased Practice Midwifery:EBPM)を行う。また、必要に応じて実践データを蓄積し、研究する。
  • 安全で快適なケアを提供するために、施設の理念や目標、業務・ケア基準、業務手順を整備する。
  • 運営管理上、必要な人的資源や物的資源を確保するとともに、業務内の人間関係の調整や業務の改善を行う。
  • 施設を自ら経営する場合には、健全な財務運営を図る。
  • 助産実践に必要な法的規定を理解し、文書や記録を適切に扱う。
  • 周産期におけるリスクマネジメントの特徴を踏まえ、医療安全体制を整備する(緊急時の対処、ハイリスク妊産婦ケアの適切な展開、医療事故防止、感染予防対策、災害対策等)。
  • 実践の場において、積極的に教育活動に携わり、後輩助産師の育成に努める。また、免許取得後も自ら継続教育を受け、助産師としての能力の維持向上に努める。
  • 専門職として職能団体を組織し、職業の水準を検討し、会員が提供する業務の質を利用者に保証す
  • 時代とともに変化する社会的ニーズを敏感に受けとめ、ケア対象者、他の専門職とのネットワークの中で研鑽し、
    協働して活動する。
  • 母子保健サービスの成果を向上させるために、助産業務や助産師教育に影響する政策決定にケア対象者とともに参画し、行政に必要な提言を行う。

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